単心室で生きる

右心低形成の娘の日々

BTシャント術


まず娘に必要だったのは

動脈管を開いておく点滴を外すための姑息術。

『BTシャント術』


動脈から枝分かれした血管と肺動脈を人工血管でつなぎ、動脈管の役割をしてもらう。

やっぱり心臓をさわるので死亡のリスクはある。

怖い。


この手術で点滴は外れる。

点滴を外すためだけの手術にこれだけのリスクを背負わなければならないなんて…。


生後3週間ほどでシャントをやる予定だったが、点滴の効きがいいので1ヶ月まで伸ばすことになった。

1ヶ月経てば血管がある程度は安定してくるらしい。新生児卒業と同時に手術。


手術2日前に、上の子がノロウイルスに感染。

上の子は翌日まで違う病院に入院した。


娘が入院してから毎日行っていたNICUに手術まで行くことをやめた。うつるといけないから。


手術当日は朝から会いに行った。

だっこで手術室まで行った。

生きて会えるのは温かい娘を抱っこできるのは

もしかしたらこれで最後かもしれない。

そんな気持ちで抱きしめた。


絶対もう一度暖かくてやわらかなあなたをだっこしたい。

麻酔から覚めたらまた会おうね。


家族控え室で待つ間胃がキリキリ痛む。

昨日からストレスでか胃腸の調子が悪い。(ノロウイルスではない)


約3時間程で手術は終わった。


ICUに会いに行った。

娘の小さな身体には沢山の点滴が伸びていた。

触られてもピクリとも動かない。

だけど胸だけはしっかり上下して動いてる。


主治医の先生は『成功です』と教えてくれた。

ただ急変が起きる確率はゼロではない。

それは手術説明の時に聞いていた。


ICUの限られた面会時間の中、上の息子を親に預けて毎日会いに行った。

意識が戻ったり、手を動かしたり…1日、1日、と回復していき、点滴も減っていった。

手術から3日後にはNICUに戻ることができた。


それからは体重もしっかり増え、問題ないとのことで点滴も外れた。

生まれてから2ヶ月ほど付けっ放しだった点滴がやっと外れた。点滴が外れたので生まれてはじめて沐浴できた。

点滴が引っかからないか心配しながら抱っこすることもない。



手術から約一ヶ月後、

インフルエンザにかかった主人を隔離して退院。

実家の協力には大感謝である。

退院の日は妹にずっと会えなかった息子も一緒に迎えに行った。はじめて妹の寝顔を見た息子は見た瞬間からニヤニヤしていた。可愛かった。あの瞬間の2人を忘れない。忘れたくない。

妹を抱っこする私に何回も何回も『見せて!』と言ってくる息子。その度に私はしゃがんで見せてやった。




『今日から一緒に暮らせる』

それが最高に嬉しかった。

一緒に暮らすのは家族なら当たり前だけど当たり前じゃない。

生まれてからNICUにいる間、寝室にある娘が眠るはずだったベビーベッドを見ては『なんでいないの?』と毎日自問自答してた。

時間を気にせずどんだけでも抱っこできる。一緒に居られる。食事制限もない。好きなだけおっぱいを飲ませてあげられる。


幸せだあ


ずっとずっと一緒に大きくなりたい。



この子の為の全てに感謝したい。

手術に携わってくれた医師たち。

サポートしてくれた看護師の皆さん。

助けてくれた私の両親。祖父母。

主人に休みをくれた会社の皆さん。

医療費は税金なので税金を払ってくれている人たち。

そして、この手術法を生み出した医師。



ありがとう。

あなたたちのおかげです。